戦車好きにはたまらない・・・・ラトルン戦車博物館/銃弾と砲弾であちこちボコボコ。元イギリスの警察署をイスラエルとアラブ軍が奪い合う/どうしてこんなことができるのか?イスラエルのハイテク軍事産業が発明した戦車防護システムは「トロフィー」と呼ばれる、いわゆる”バリヤー”です。 - Today→Tomorrow

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1/28/2014

戦車好きにはたまらない・・・・ラトルン戦車博物館/銃弾と砲弾であちこちボコボコ。元イギリスの警察署をイスラエルとアラブ軍が奪い合う/どうしてこんなことができるのか?イスラエルのハイテク軍事産業が発明した戦車防護システムは「トロフィー」と呼ばれる、いわゆる”バリヤー”です。

イスラエルでは、こんなアニメに出てくるバリヤーのようなものまで実戦配備されています・・・

テル・アビブからベン・グリオン国際空港を通過して20分くらいの場所。1号線をエルサレム方面に行く途中にあるLatrunラトルンで高速道路を下りる。
1号線から間もなくの場所に戦車が見える丘へ。
ここが世界でも有数の戦車ばかりを集めた博物館 ラトルン戦車博物館だ。
入り口で入場料30シュケル(約900円)を払い、階段を上る。
階段の上には広い丘が広がる。
これは園内の地図。
左右にはたくさんの戦車が並ぶ。

広場の中央には要塞のような建物。
その右側にヘブライ語で名前が刻まれた慰霊銘板がある。
1973-1982の間の陸軍の戦死者の数。
最近のものは2006年。
2006年はイスラエルとレバノンとの間で激しい戦闘があった年だ。

  • 2006年7月12日 レバノンのヒズブッラー、イスラエル兵2名を拉致。
  • 2006年7月13日 イスラエル、ヒズブッラー民兵によるイスラエル兵拉致の報復にベイルート空港を爆撃、レバノンを海上封鎖。
  • 2006年7月16日 レバノン南部で夏休み中のカナダ人家族など7名がイスラエル軍の攻撃でに巻き込まれ死亡。

なんとカナダ人がこの戦闘で犠牲になっていた。

中央にある建物を良く見ると、
砲弾で攻撃された跡が無数にある。
この建物があるラトルンの場所。
テル・アビブとエルサレムの中間に位置するラトルンは、エルサレムへの交通の要として戦略上、非常に重要な場所にある。

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そのため中東戦争ではこの場所は非常に激しい戦闘が繰り広げられていた。第一次中東戦争でイスラエルは聖地エルサレムの奪還、アラブ側はエルサレムの死守とエルサレムに通じるイスラエルの補給路を遮断するために必至に防衛。その戦場の中心がこの建物だった。
砲弾と銃弾の跡だらけのこの建物は、当初イギリス統治下の警察署だった。イスラエル建国の機運が高まるにつれ、アラブ諸国とのいざこざが頻出する前にイギリスは撤退。その後、この警察署はアラブ軍の領地になる。館内に入る。
入り口に入って左右にはイスラエル陸軍の記章が並ぶ。第一次中東戦争でラトルン攻略に失敗したイスラエルは1967年の6日間戦争でようやくラトルンを占領する。
入り口の正面には、
戦車と兵士のモニュメントがある。イスラエルは戦車がメインの兵力。占領政策は空軍と海軍ではなく、陸軍が非常に重要なポジションになるので当然だ。
館内には立派なシナゴーグ(ユダヤ教の礼拝堂)もある。
薄暗い展示室では、戦死した兵士の写真が浮かび上がる。
ここは建物のタワー部分。
床はガラス張りで、下の石畳が見えるようになっている。
天井は高く、壁には貫通した砲弾の痕跡がいまも生々しく残っている。
建物は2階建て。上階へ移動。
建物の真ん中は大きなホール。
そのホールの周りに展示室がある。戦死した兵士の写真と
ベレー帽。
そしてなぜか戦車の郵便切手が展示中。
イスラエルの戦車切手はもちろん、ドイツのものや、
カナダの戦車切手、
アジアでは中国の切手が飾られていた。
中央ホールに飾られているイラスト
ヘブライ語なので意味は分からないが、どことなくfunny。
こんな女性兵士は、今でもたまに見かける。
こちらは油絵コーナー。
赤い絵の具が戦慄さを印象づける。

展示の隅には、ボロボロのイスラエル国旗が飾られている。これは1967年のエジプト軍との激しい戦争中にスエズ運河付近ではためいていたイスラエル国旗。
ヨム・キプール戦争(第四次中東戦争 1973年)から40周年を記念した写真展示が行われていた。

エレツ司令官とその部下たち。ヨム・キプール戦争とはユダヤ教の大安息日ヨム・キプールを狙ってイスラエル南部からエジプト軍、そして北部からシリア軍が同時攻撃してきた戦争だ。
大安息日でイスラエル国中が電気も使わない宗教的儀式を行っている間を狙って隣国が侵攻。イスラエルは深刻な状況まで追い詰められた。
戦地で食事をとる司令官。
スエズ運河とゴラン高原で苦境に追い詰められるものの、劣勢を挽回してイスラエル軍は南はカイロ、北はダマスカスまで攻略できる位置まで軍を進めたが、国際圧力により停戦を受け入れた。
戦地でヒゲ剃りをするイスラエル軍兵士。
スエズ運河を渡る戦車。
そしてイスラエル軍の逆襲は、カイロに近いスエズの街にも到達。
厳しい戦場でシンガーが兵士を歌でねぎらう。
アコーディオン奏者とシンガーも必至だ。
手当を受ける負傷兵士
建国以来、連戦連勝のイスラエル軍が初めて劣境に立たされたヨム・キプール戦争も、イスラエル軍のよく訓練された兵士たちの健闘で最後は勝利。しかしイスラエル建国以来の与党だった労働党は、この戦争のあおりを受けて野党に下野。エジプトは、アメリカに中東政策の見直しをさせることに成功し、イスラエルとの和平条約を結ぶことになる。
一方、こちらはシリアとの国境にちかいゴラン高原で破壊されたシリア軍の戦車。和平条約という成果をつかんだエジプトとは対照的に、シリアは現在でもイスラエルにこてんぱんにやられている。
このイラストは何を意味しているのだろう?
次の展示室は大きい部屋だった。テーマは第二次世界大戦。
日本が登場する数少ない展示は、太平洋海戦。
そして長崎と広島に大きな爆発サイン。
アメリカ・コーナーでは、硫黄島に立てられる星条旗の写真が展示。
これはドイツについての展示。
アジアでは唯一、中国の展示だけだった。
制服や記章の展示コーナーには、
台湾だろうか、漢字が書かれている布切れが展示中。
第二次世界大戦の展示コーナーの他に、こんな展示もある。

元祖・戦車の展示だ。戦車の祖先はやはり馬車。兵士は弓矢で敵軍を攻撃する。
以上が元警察署の建物内展示。

再び外に出て、右を見渡すと大きな半円形屋外劇場の向こうに、
アンテナとドームが一体となったレドームが見える。
ここからはずっと戦車の展示。

まずはイスラエルの主力戦車メルカバ。
イスラエルの建国間もない頃の戦車は、すべて海外からの輸入戦車だった。しかしフランスがイスラエルとの戦車売買の停止を決め、イギリスもアラブ諸国の圧力でイスラエルとの戦車売買契約を破棄。
そのため1970年台にイスラエルは自国生産で戦車を作るのが必然となった。
そして1979年4月に初代メルカバMk1が登場する。
初陣は1982年のレバノンとの戦闘。当時、ソ連の最新戦車T72を多数撃破して一躍有名な戦車となる。しかしメルカバMk1は900馬力で攻撃力はそこそこ。それもそのはず、戦力を落としてまで必要なものがメルカバには求められていた。

それがこれ▼。
他国の戦車にはない、後部ハッチ(出入口)がメルカバには常備。
メルカバは過去の戦争からの経験で、兵士の生存率を一番に考えた設計になっている。正面から攻撃されることが多いので、脱出しやすいように後部にハッチを付けた。それは当然ながら、エンジンが後部ではなく前部に配置されるようになる。エンジンを戦車の正面に配置すると攻撃された時にエンジンが被弾して動けなくなる可能性が高い。しかし同時にエンジンも防護壁代わりになり、兵員の安全性が向上する。動けなくなる可能性も高いが、それにも増して兵員の生存率が高くなるのを優先。
人口1000万人にも満たない小国ならではの人を大切にする設計とベテランを失わないという戦略を重視して作られた世界でも稀な戦車だ。

第二次世界大戦中に日本軍が人間魚雷や特攻隊など人を大切にせず、人材育成をしてこなかった史実とはまったく逆である。

続いてこの戦車▼はメルカバMk2。初代メルカバよりも砲塔の防護を強化した車体。
初代と同じく後部ハッチを常備。この後部ハッチは、戦場に横たわる負傷した兵士を戦車内に運び、その場から立ち去る救急車のようなことにも使われた実戦経験もある。

さらに1990年に実戦配備されたメルカバMk3。この戦車は初代と二代目からの完全リニューアル。
砲塔も車体も新規に設計された。
主砲には国産の120mm滑腔砲が採用され、初代と二代目の105mmから大幅アップ。
エンジンも900馬力から1200馬力に増強。
完全リニューアルの車体だが、兵士の生存率を高める後部ハッチはそのままだった。

そして最新バージョンのメルカバMk4。
対戦車ミサイルに対向するため砲塔の大型化による防護力アップ、そして1500馬力
(ドイツ製エンジンを搭載)で世界最高水準の運動性能を持つ。

そして何と言ってもイスラエルの戦車の特徴は、イスラエルで開発されたアクティブ防護システム「トロフィ」を搭載していることだ。

この防護システムは、戦車の全周囲360°を監視し、近づいてくる対戦車ミサイルやロケット弾を瞬時に判断し、全自動で戦車の回りに弾幕を張り、ミサイルやロケット弾を破壊する装置。
まるでアニメのバリヤーのような役割をもつこの最先端の防護システムはイスラエル企業が開発。すでにすべての戦車に搭載され、2011年3月にガザ地区での対戦車ミサイル攻撃を防いだ実戦経験を持つ。
しかも戦車にあたるかどうかを事前に自動判断し、当たらないミサイルは防護しない省エネ設計。
とにかく兵員の安全を第一にした人にやさしい?イスラエルの戦車だ。

それにしてもこの戦車。横から見ると・・・・砲塔の形が特徴的だ。
動物に例えると、、、マタマタの頭の部分。
ウルトラマンの怪獣なら、カネゴン
ガンダムなら何となく、アッガイ

まったく関係ないが、東京体育館は、
ビクザムに似ていると思うのは僕だけだろうか?

ラトルンの戦車博物館はこの後も続く・・・・


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